当院の感染管理組織
院内感染防止対策に関する取り組み事項
当院では、患者さんと職員を院内感染から守るため、感染管理室(院内感染対策チームICT、抗菌薬適正使用支援チームASTおよびICTリンクナース)が中心となって感染防止に取り組んでいます。
感染管理室の主な活動内容(取り組み事項)
- 日々の感染予防と感染症発生時の原因の調査・拡大を防ぐ対策の検討
- 病原体の検出状況の把握および抗菌薬の使用状況の把握と介入による抗菌薬適正使用の推進
- 院内感染対策マニュアルの作成と、実践状況の監視・指導
- 職員から患者さん、患者さんから職員への感染を低減することを目的とした血液曝露防止対策、抗体検査、ワクチン接種
- 病院職員の感染対策に関する意識の高揚及び医療の質の向上を図るための感染管理教育
- 病院職員に対して、感染予防に関する相談システムの構築
- 看護師の立場から感染対策に対応する組織であるICTリンクナースによる各看護単位の感染対策上の問題抽出と実践
- 感染症や感染対策に関する全国サーベイランスへの参加とデータ登録
- 患者さん・ご家族への、感染対策実践のお願い(手洗い、咳エチケット等)
- その他、院内感染防止対策に関すること
院内感染対策チーム(ICT)
当院のICTは、院内感染対策の実践組織として平成17年に発足しました。
メンバーは医師(感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師)、看護師(5年以上感染管理に従事した経験を有し、感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師)、薬剤師(3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策に関わる専任の薬剤師)、臨床検査技師(3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師:細菌検査担当)、事務職員を必須とし、ミーティングには臨床研修医等も参加しています。
ICTの所掌事項
(1)サーベイランス業務(院内感染の現状把握)
① 院内における細菌など病原体検出状況の把握
② 院内における感染症発生の確認、感染源や感染経路の把握
③ 病院環境の汚染状況や保菌者の把握
④ 各種感染症に関する院内サーベイランスの実施
⑤ 国や地域の各種サーベイランスへの参加、データ提供
⑥ 院内の抗菌薬使用状況の把握
⑦ 院内感染予防対策委員会への報告
(2)コンサルテーション・指導業務
① 感染対策に関するコンサルテーション・指導
② 感染予防対策に関するマニュアル・ガイドラインの作成・改訂
③ 院内における感染対策処置・予防処置の評価と指導
④ 院内での感染症発生時の対応と隔離予防策の指示、病床管理の権限
⑤ 感染症アウトブレイク時の対応
⑥ 院内ラウンドと現場への指導、病院への改善策の提案
⑦ 感染管理に関わる各種器材や衛生材料の採用に関する提案、使用指針の策定
⑧ 感染対策の啓蒙・教育・研修会の企画開催
⑨ 地域の施設・医療機関との感染対策ネットワークの構築と指導
⑩ 感染対策に関する患者や家族・地域住民などへの対応
(3)その他、感染対策に関する業務
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)
薬剤耐性対策の一環として取り組まれる抗菌薬適正使用推進のための実践組織として平成30年に設置されました。メンバーは、医師(3年以上の感染症治療経験を持つ専任の常勤医師)、看護師(5年以上の感染管理従事経験を持つ、感染管理にかかる適切な研修を修了した専任の看護師)、薬剤師(3年以上の病院勤務経験を持つ感染症診療に関わる専任の薬剤師)、臨床検査技師(3年以上の病院勤務経験を持つ、微生物検査に関わる専任の臨床検査技師)、事務職員により構成されます。
ASTの所掌事項
(1)感染症治療の早期モニタリングと主治医へのフィードバック
① 抗MRSA薬及び抗緑膿菌作用のある広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染症兆候のある患者、免疫不全状態等の特定の患者集団など、感染症早期からのモニタリングを実施する患者を施設の状況に応じて設定する。
② 感染症治療の早期モニタリングにおいて、①で設定した対象患者を把握後、適切な微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況、初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の妥当性、必要に応じた治療薬物モニタリングの実施、微生物検査等の治療方針への活用状況などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバックを行う。
(2)微生物検査・臨床検査の利用の適正化
適切な検体採取と培養結の提出(血液培養検査の複数セット採取など)や、院内のアンチバイオグラムの作成など、微生物検査・臨床検査が適正に利用勘定な体制を整備する。
(3)抗菌薬適正使用に係る評価
抗菌薬使用状況や血液培養複数セット提出率などのプロセス指標および耐性菌発生率や抗菌薬使用量などのアウトカム指標を定期的に評価する。
(4)経口抗菌薬の処方状況の把握
外来における過去一年間の急性気道感染症及び急性下痢症の患者ならびに当該患者における経口抗菌薬の処方状況を把握する。
(5)抗菌薬適正使用の教育・啓発
抗菌薬の適正な使用を目的とした職員の研修を少なくとも年2回程度実施する。また、院内の抗菌薬使用に関するマニュアルを「抗微生物薬適正使用の手引き」を参考に作成・改定する。
(6)院内で使用可能な抗菌薬の見直し
院内で使用可能な抗菌薬の種類、用量等について定期的に見直し、必要性の低い抗菌薬について院内での使用中止を提案する。
(7)他の医療機関から抗菌薬適正使用の推進に関する相談を受ける
抗菌薬適正使用支援チームが、抗菌薬適正使用支援加算を算定していない医療機関から、必要時に抗菌薬適正使用の推進に関する相談等を受ける。
サーベイランスへの参加
当院は、以下の全国サーベイランスに登録しています。
(1)JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)
① 検査部門
② 全入院部門
③ 手術部位感染(SSI)部門
(2)J-SIPHE(Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology)
また、岩手県医療局感染対策委員会の感染関連統計部会が行う岩手県立病院全体の各種統計(薬剤部門および検査部門)、奥州感染管理ネットワーク(OICONⅡ)で集計する地域の統計にも参加登録し、情報の共有と分析を行っています。
感染対策の院内研修
当院では、全職種の職員を対象に年に2回の院内研修会を開催しており、全ての職員が研修会に参加することを義務付けています。
感染対策の地域連携
(1)当院は、感染対策向上加算1届出医療機関であり、「奥州感染管理ネットワーク:OICONⅡ」を主催し、奥州保健所および奥州医師会と連携・共催して、感染対策向上加算2・3届出医療機関、外来感染対策向上加算届出医療機関とともに、一年間に4回の合同研修会を開催しています(そのうち1回は、新興感染症対策訓練を実施)。また、指導強化加算に基づく医療機関訪問と助言、診療所における抗菌薬使用状況報告に対する確認と助言を行っています。
(2)当院は、同じく感染対策向上加算1届出医療機関である2つの医療機関と相互訪問・評価を行っています。
(3)岩手県立病院では、感染管理担当者等による医療局感染対策委員会を組織しており、当院もこれに参加し、県立病院全体での感染対策に関わる方針やマニュアル作成等に関わっています(同委員会の下部組織である感染管理認定看護師部会及び感染関連統計部会にも参加し活動しています)。
(4)地域の感染症対応について協議する胆江圏域感染症対策連絡会議に参加しています。
(5)災害発生時等の避難所等における感染制御支援を担当する県の組織「いわて感染制御支援チームICAT」の統括部等のメンバーとして当院職員が参加しており、災害時の感染制御支援だけでなく、平時からの研修や総合防災訓練への参加などの活動を行っています。
令和5年度新興感染症対策訓練(PPE着脱訓練)
令和6年度新興感染症対策訓練(新興感染症対応机上訓練)
令和6年度診療報酬改定に伴う第一種協定指定医療機関
令和6年度の診療報酬改定に伴い、感染対策向上加算1届出施設である当院は、第一種協定指定医療機関として岩手県と医療措置協定を締結し、新興感染症発生時の対応として、①新興感染症病床確保、②発熱外来の設置、③自宅療養者医療提供、④後方支援、⑤人材派遣、⑥PPE備蓄を行うこととなっています。